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私の仕事も他人の人生を左右する側面があるかも知れぬが、他人の命まで影響を与える仕事ではない。 しかし医療現場で日々戦う彼らは、掛け値なしに他人の命を預かる仕事だ。 看護師は私より年上はいなかったし外科医も若かった。 1963年生まれの私より後、この世に生を受けた若者たちが、こんなにも必死に仕事を通して聖なる使命を果たしている姿に感動を覚えた5日間だった。 彼ら全員に共通するスキルは、とにかく患者の名前を一回覚えたら忘れないのだ。 そして事あるごとに患者の名前を呼ぶ。 私は営業マン研修で、お客様の自己重要感をくすぐるためには‘相手の名前を商談中にしょっちゅう呼ぶ事’と‘商談中の相手の話を熱心にメモる事’を意識しましょうと言っているが、営業マン以上に医療現場の彼らの方がよくできている。 どんな看護師さんが来ても、引継ぎ内容は完璧に出来ているし、名前は絶対に間違えないし、非常に高いスキルを身に付けている。そして、医者も看護師も超人的な体力を有す。 私の主治医など、ほんまにいつ寝てるのかと心配するほど次から次へと仕事をこなす。 この先生との最初の出会いは、年末の真夜中に起こった胆石発作がきっかけだった。 脂汗をタラタラ流し、ウンウン唸りながら、もがき苦しむ私に冷静に鎮痛剤を投与し、その場で激痛を緩和してくれた。 そうすると次には、カーテン一枚を隔てた隣室に急患で運び込まれた負傷者を縫合する。 カーテンがふと揺れた瞬間に見えた急患の全身、そこには見事に描かれた龍神と蓮の花の絵模様。 時は年末。飲み屋での抗争の末だろう、極彩色に‘お絵かき’された全身に血が飛び散っていた。 しかもこの急患の威勢がよかった。 「われぇ〜ッ!こらぁ〜ッ!どんな縫い方しよんじゃッ!痛いやんけッ!ワシの身体を気安〜に触るなッ!このボケがッ!」と外科医に悪態をつき、血まみれの身体で暴れていた。 知能指数は低そうな面構えをしているのに、腕っ節だけは強そうな上腕二頭筋がプルプル震えていた。 そのムチャクチャな急患負傷者にも、冷静な処置を施し帰す。 私のように大人しくダンディな優良患者にも、分け隔てなく最適な処置を施し帰す。 そんな真夜中の急患に対応しながら、昼間の外来を診て、オペをして入院患者のケアまでする。 あの細い体のどこにそんな超人的な体力が隠されているのだろう。 入院後半は、自分の予後より主治医の生き方に興味が湧いてきた。 ありがとうございます、感謝。報酬ではなく使命感で自らの天職を貫いている主治医の職業観。 ありがとうございます、感謝。世の中は本当に一人の力だけでは生きていけないと実感できた5日間。 ありがとうございます、感謝。私も人には出来ない事をやって、人のお役に立つ人生を送ると決意できた5日間。 |
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